薬剤師になって見せる~医療職としての吟持を持って~

106回薬剤師国家試験に合格。次なるステージを見据えて自身の気持ちを前向きに考えて、薬剤師としての一歩を

あの事件から26年~事件から見えてくる『本当の意味』での怖さ~

おはようございます!皆さんは、覚えているでしょうか。

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事件について

多くの人の命が、この事件で失われた…あの日からもう26年となります。

1995年の3月20日に起こったこの事件で、あの猛毒と言われるサリン

使われ、無差別殺人が行われました。

1995年の1月17日に、あの阪神淡路大震災が起こっていましたが、あれから

まだ、二か月も経っていなかった…と考えると、何とも言えない時に、事件が

起きたということになります。

事件で使われた猛毒:サリン、その特性から見る事件の怖さ

地下鉄サリン事件で考えないといけないのは、このサリンの毒性がどれだけのもの

かであると同時に、この事件でなぜ、サリンが使われたのか、この二つの視点について

です。

まず、サリンの毒性についてですが、この化合物が実際どういう構造をしているのかを

見れば容易に推定ができます。

サリン に対する画像結果この構造を見て、どうですか?

この構造に含まれているフッ素。これがあることで、より一層効果が強まることが

分かっています。ステロイド剤にも、『フルオロ~』というものが付きます。

で、一番見ないといけない部分がどこかですが、それは、『リンと酸素の結合』です。

この結合がかなり強いんですね。この結合は、お互いの親和性が高いです。

そのため、生体に入った時に、コリンエステラーゼを強力に阻害することが分かってい

ます。阻害様式はこちらです。

ソース画像を表示

出典:acetylcholine esterase

ここから見て頂いたわ分かりますが、コリンエステラーゼの結合部位、エステル部位に

リンが結合します。この時に、リンと酸素の親和性が高いために、強力な結合(共有

結合)ができるため、阻害作用が強くなるため起こるということが言えます。

なかなか外れないので、不可逆的な阻害作用をもっているということができます。

この作用の甚大性が、この事件をより悲惨なものにしたということが出来ます。

サリンが使われた要因、それは、確実に人を殺める事ができるだけの強さが

あったから…という恐ろしい結論を導けます。

サリンの解毒

コリンエステラーゼ阻害作用により、生体内で、多くのアセチルコリンが存在すること

でちょっと不都合なことが起こります。縮瞳により、暗く感じることや、消化器系の

過剰の蠕動運動が基で、下痢がおこったり、気管支平滑筋が収縮されることで、呼吸

困難になったり…数えればキリがないレベルで、いろんな事が起こります。

サリンの場合は、自力での分解が難しい化合物であったことから、症状をより

重症化させたとも言えます。

こういう症状を抑えるためには、これしかないです。そう、コリンエステラーゼ賦活薬

と抗コリン薬です。今回の場合は、コリンエステラーゼ賦活薬のPAMの使用がよくされ

ました。が、それだけでは、まだまだ完全ではない。アセチルコリンが大量に存在して

いるので、それが減少するまでかなり時間がかかります。だからこそ、抗コリン薬

を使って、ムスカリン受容体に結合するアセチルコリンと競合する形で遮断すること

が必要になってきます。

これらが使用されることで、症状が落ち着いてきます。こういう薬物が病院に潤沢に

あるところとないところとあったそうです。それを考えると、命の選別がされた可能性

もあり、究極な話だ…と何もいえませんでした。

まとめ:二度と同じ過ちを繰り返さないために

実際に、未だに障害を抱えている方、実際に、救命に当たって命を落とした職員の

存在など、まだまだ、この事件は本当の意味では終わりがない事件であると感じて

います。危険性の高い薬物を地下でまき、多くの命を無くした、とんでもなく、

凶悪なやり方に、私は恐怖しか持ちません。

しかし、このような知識や、検査技術などを使い熟す力も、必要であるということ

がはっきりわかった事件であったと言えるのではないかと感じています。

薬剤師国家試験においても、実際に出題された化合物であります。が、それだけで

終わっては意味がないと思います。この薬物の怖さ、その作用の意味を汲み取り、

今後も勉強を続けていきたいと思います。